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プロジェクトストーリー

世界貿易センタービル
南館建設プロジェクト

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PROJECT MEMBER

Episode 01.

浜松町を変えるプロジェクト。
半世紀以上の歴史あるビルを建て替える使命感。

「何もない」ところから何かを作る、ではなく、
「すでに全てがある」ところからのスタート

東京を拠点として働く人にとって、JR浜松町駅前に鎮座する「世界貿易センタービル」を見たことがない、という人はなかなかいないだろう。ブロンズ色の重厚感あるこのビルは、1970年代に建設され、50年以上浜松町の成長を見守り続けてきた。当初は日本で一番高い高層ビルとしても話題になった。「そんな浜松町のランドマークとも言える世界貿易センタービルを中心に、駅前一帯を再開発する−−。これは責任重大だと思った。」と、荒川はプロジェクト参加当時を振り返る。まだ何も建っていない場所や、駅から離れている場所での開発ではなく、すでに東京の大動脈として日々人々が行き交い、テナントも密集して機能している、いわば都市として「完成された状態」からの再開発。日本で前例のないプロジェクトの進行には困難が予想された。さらに、電車、バス、タクシーなどの乗り換えをスムーズにする駅前自由通路の開通も計画され、もはや「ビルの建て替え」の枠組みを超え、公共性の高い「エリア開発」という広い視野を持ってプロジェクトに臨まなくてはならなかった。

約50年に亘って支えてきてくれた地元の方に
いかに恩返しができるか?

その開発規模に比例して、開発関係者の数も膨大だ。行政、共同事業者、テナント、地元住民の方々…あらゆる方面との調整が必要になる。社内からも、「本当に実現可能だろうか・・」という声が聞こえてきた。しかし、一生に一度経験するかしないかの一大プロジェクトだ。荒川はプレッシャーを感じると同時に、大きな期待と使命感も感じていた。「この計画を聞いたとき、約50年に亘って支えてきてくれた地元の方の気持ちに応えられるようなプロジェクトにしたいという想いがありました。このプロジェクトは事業としての成功とともに『浜松町にいかに恩返しができるか』という命題も背負っていると感じています。」多くの人が関わる大規模な再開発だからこそ、最初は皆が皆、同じ方向を向いていたわけではない。荒川は様々な人のもとに足を運び、意見を交わした。話を聞き、まとめ、各所に納得してもらえる方向を導き出すまでには、気が遠くなるほどの時間を要した。過去の浜松町のDNAを引き継ぎつつ、未来の浜松町にとって本当に価値のあるものを形にするため、荒川は試行錯誤しながら、細かな調整を重ねていった。

「浜松町ブランド」をここから作っていくために

プロジェクト開始から10年を超える歳月をかけ、2021年3月、本プロジェクトの第一弾となる南館がオープンした。しかし、まだまだ気は抜けない。南館を足がかりに、「本館」「ターミナル」を2027年にオープンする予定だ。「浜松町を『通過する街』から『滞在する街』にしていきたい。」2021年11月には本館の上層フロアへ国際水準のホテルを上乗せするなど、都市計画の変更提案が承認された。浜松町にさらに人を呼び込むため、荒川を始めとしたプロジェクトメンバーが全精力を注いで推進した計画だ。「実は浜松町は、江戸の風情を感じられる神社から、最新鋭の設備を整えたオフィスまで、新旧の良いものが混在する面白い街です。この地で長らく事業を営んできた私たちだからこそ、その魅力を発信し“浜松町ブランド”を作っていく使命があると思っています。」荒川の挑戦はこれからも続く。

Episode 02.

「世界貿易センタービル」のエッセンスを引き継いだ
「価値あるビル」をつくるために

何を残し、何を変えるか?
地域住民や社員の期待を受けて。

重厚感のあるブロンズ色の「世界貿易センタービル」は、他では見ない特徴的な外観だ。建設から半世紀を迎えた今も、この外観に誇りを持っている社員は多い。また、地域住民の中には、子供の頃から世界貿易センタービルを見ながら育ち、愛着を持っている方も少なくない。仲は南館の設計にあたって「地域や社員から愛されてきた旧ビルの伝統をいかに継承するか?」を一番に意識したという。50年前と比べると建設技術・建築資材も飛躍的に進化している。一面をガラス張りにして外の景色を見せる、などのトレンドも求められる。旧ビルのエッセンスと新しい技術やトレンドを融合させ、いかに新たな伝統を生み出すか。仲の腕の見せ所だ。

自分の好みより、
「お客様の声」と「先人たちの想い」

継承すべきものと、改善すべきもの。「これは担当者の好みだけで判断して良いものではない。」仲は、近隣の方々や、入居テナントの方々、来訪されるお客様に愛されてきたものを客観的に捉えることを念頭に置いた。デザイン、事務室の形状、動線、機能性――。何を評価して、どこに不満を感じているのか?仲はプロジェクトメンバーと何度も打合せを重ね、継承すべきものを洗い出していった。また、南館は社名を冠するビルだ。会社のアイデンティティを感じられるビルにしなければならない。仲は、今一度、会社の歩みとそこに込められた当社の先人たちの想いを振り返った。こうして、「お客様の声」や「会社の創業から引き継がれる想い」を、仲はできる限り南館の設計に落とし込んでいった。

“良いビルとは何か?”
考えることをやめない。

2021年3月にオープンした南館には、旧ビルの伝統と歴史が随所に取り入れられている。例えば、外壁パネルには旧ビルで使っていた素材と全く同じものを使用して重厚感を継承。ビルの随所に使用されている大理石も、旧ビルのホールに使われていた石材と同じものを用いている。意匠として工夫が凝らされ、新しさと伝統をバランス良く融合させた建物となった。「近隣の方から南館のデザインについてお褒めの言葉をいただいたときは、本当に嬉しかったです。」2027年にオープン予定の本館では、仲が南館の建設で培った経験を活かし、さらに良いビルづくりを目指す。「本館を建てる頃には、今よりもさらに技術も進み、新しい材料も使用可能になるでしょう。南館よりもさらにパワーアップした設計をできるように、今まさに邁進中です。」

Episode 03.

100を超えるテナントとの移転交渉。
カギは、積み上げてきた”信頼関係”

どんなに大変でも、スタンスは変えない

気が遠くなるような話だった。「世界貿易センタービル」には100を超えるテナントが入居している。そんなビルを建て替えるということは、その全てのテナントに移転していただかなければならないことを意味している。移転が上手くいかなければ、ビルの解体ができず、プロジェクト全体のスケジュールにも影響が出る。凄まじいプレッシャーだ。しかし、小瀧の軸はぶれなかった。それまで通り、お客様のもとを訪ね、地道に対話を続けていった。「ビルの建て替えは当社の都合です。どんなにテナント数が多かろうが期限があろうが、お客様であるテナントの方々にご迷惑をかけて良い理由にはなりません。すべてのお客様にご納得いただくまで、粘り強く丁寧にご説明をしました。」

広い視野で。長い目で。

小瀧にはもう一つミッションがあった。南館のリーシングだ。立地動向の調査、賃貸条件の設定・調整を経て、最終的には契約する。今後の会社の収益を確保するための重要な仕事だ。「南館のテナントは、外部から呼び込むのではなく、旧ビルから移っていただく方々が多いという特殊性もありました。」市況動向、周辺ビル賃料、ビルのスペック――。あらゆる要素を考慮し何度も何度も調整した。南館リーシング中にはコロナ禍によりオフィス市況が悪化した。「駅前立地のため、賃料を下げれば、確かにテナントは入ります。しかし、浜松町のシンボルとも言えるこのビルが値崩れを起こせば、浜松町、ひいては周辺地域の値崩れにも繋がりかねません。」小瀧は、世界貿易センタービルのみならず、今後発展していく浜松町周辺地域の未来までを見据えながら熟慮を重ねた。

長期にわたるお付き合いだからこそ
「信頼関係」を築くことを大切に

南館が無事オープンし、旧ビルは約50年の歴史に幕を閉じた。小瀧は100を超えるテナントとの交渉をやり遂げたのだ。「南館のオープンや旧ビルの閉館が上手くいったのも、テナントの皆様や地元の方々と長きに渡り“信頼関係“を築いてきたからこそ、助けられた部分も大きいと感じています。」地域に密着し、地道に堅実に事業に取り組んできたからこそ、皆さんからの応援の声も数多くいただいていた、と小瀧は語る。「テナントの方々、地元の方々とは長いお付き合いになるからこそ、「貿易センターに任せておけば大丈夫だな」と思ってもらえるような対応を常に心がけています。これからも、地道で誠実な仕事をしていくことが、やがて大きな事業の成功につながると思って、目の前の仕事に取り組んでいきます。」

Episode 04.

再開発プロジェクト第一弾立上げへの想い。
ひとつひとつ、丁寧に。誠実に。

南館の立上げ部署に異動。
限られた時間との戦い。

2020年4月、矢野は新設された部署への異動を命じられた。南館の開業前は建物全体の管理体制や館内規則などの策定、開業後はその管理・運営をしていく部署だ。前の部署は顧客と直接かかわる運営管理。まさしくこのために経験を積んできたといっても過言ではない。「南館のポテンシャルを最大限に引き出してみせる。」しかし、1年という期間の中で多くの難題と直面することになる。旧ビルの単独所有に対し、南館は複数の共同事業者との区分所有。旧ビルでは単独で意思決定できたことでも、複数の共同事業者との合意形成が必要となったのだ。また、南館は浜松町駅と隣接しているため、ビルの利用者だけでなく、駅を利用する人の流れも考慮しなければならない。こうした周辺環境のほか、ビルのハード面、運営のソフト面でも多くの複雑さ・課題が見えていた。オープンは2021年3月下旬。そこまでにビルをスムーズに運営できる状態にする必要がある。限られた時間との戦いが始まった。

全方位とコミュニケーションをとりながら、
次々とものごとを進める、決める。

開発・建設担当の部署から共有される南館の仕様を基に、共同事業者などと建物全体の管理体制や館内規則を決めていく。営業担当の部署からは旧ビルから移転するテナントや新規テナントの情報を受け取り、テナントの担当者などと移転スケジュールを調整する。矢野は社内外の様々な人とコミュニケーションを取りながら業務を進めていった。「開発や設計の部分で計画が変更になると、運営の体制やコストの考え方も変える必要があります。常に情報をアップデートしつつ、共同事業者と連携しながらルールを決めていくのは本当に大変でした。」南館のオープンが刻一刻と迫る中、矢野は昼夜を問わずギリギリまで奔走した。そして2021年3月、南館は華々しくオープンを迎えた。走り続けた1年間。矢野はひとつの節目を感じ、ほっと胸を撫でおろした。

世界貿易センタービルディング
「らしく」丁寧に、誠実に

南館のオープンは、矢野の運営担当としての新たなスタートラインだ。目の前にある多くの新たな仕事に向かって、矢野はまた走り始めた。お客様の満足度やビル関係者との良好な関係構築は、いかにきめ細やかな管理・運営ができるかにかかっている。「壁にぶつかったときに立ち返る原点は、利用者の声に耳を傾けることです。日々の管理にプラスして、ソフト・ハードの両面でビルを成長させていくことも重要です。」もともと、株式会社世界貿易センタービルディングは、ビルの管理・運営を根幹とする会社だ。ビルが変わり、ルールが変わっても、真摯に業務に取り組む姿勢は変わらない。「“浜松町”は当社にとって、50年以上関わってきた大切なまちです。そして、その関わり合い、まちを大切にする想いはこれからもずっと続くもの。不動産管理は建物内で完結する仕事ではなく、まちの発展において鍵となる分野だと考えています。ひとつの建物がビジネスコミュニティの場となり、まち全体を盛り上げていく。今後もそのプロセスに挑戦し続けたいです。」

唯一無二の「浜松町ブランド」を構築するために、
地域に根差したまちづくりを。

浜松町のランドマークだった「世界貿易センタービル」。
1970年にビルが完成した当初は、「未来の象徴」でもあったこのビルに、
東京の、そして日本の未来への期待と待望を重ねた人も多かったであろう。
そんな世界貿易センタービルが、その歴史に幕を閉じ、
その跡地でまた大規模な都市開発プロジェクトが進行している――。

2027年に本館がオープンする頃には、浜松町はどんな街になっているだろうか。
私たちは、どのように生きているだろうか。
その時には、ここ浜松町にまた「未来の象徴」が生まれているかもしれない。
東京で唯一無二の「浜松町ブランド」が生まれているかもしれない。

株式会社世界貿易センタービルディングの、地域に根差したまちづくりは、
今日もなお、続いている。